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第三章 金田一耕助登場--金田一耕助登場(3)
日期:2023-12-21 13:58  点击:257

「殺されたって? 誰に……?」

「極きまってるじゃないか、蜂屋の奴にさ。八千代は馬鹿だよ。イカモノ喰ぐいなんだ、

あいつは。……最初、蜂屋の背中の瘤こぶにちょいと魅力を感じて、浮気をしてみようっ

て気になったんだろうが、蜂屋が殺人犯人だってことになると今度は真実ノボセあがっ

た。蜂屋が英雄みたいに見えて来たんだ。そういう女なんだよ。八千代という女は、不道

徳というより無道徳なんだ。はじめから世間なみの道徳観念なんて、全然ない女なんだ。

そこで蜂屋のあとを追っかけていってそしてどこかで殺されたのさ」

「フーム」

 私は直記のこの説に、すっかり感服したわけではないが八千代さんの行方がいまもっ

て、わからないところを見ると、そういうこともあるかも知れないと考えざるを得なかっ

た。私はなんとなく、みぞおちのあたりに砂利を詰められたような重っ苦しい気持ちだっ

た。

「いったい、八千代さんは家を出るとき、どのくらい持っていたんだろう」

「そんなことわかるもんか。うちのおやじはその点実にだらしがなくてね。そりゃ大きな

ところ、何百何千万というところはちゃんとおさえてるさ。だが、それ以下のわれわれの

小遣いくらいのはした金となると、おやじは全ゼン寛大なんだ。寛大を通り越してルーズ

なんだ。おかげでおれなども大助かりだが、八千代の金遣いと来たら、どうしてどうし

て、おれどころじゃねえ、ちょっと買物に出るにも、ハンドバッグの中に十万ぐらいの金

は持っていようという女だからね。蜂屋にとっちゃいい持参金だったろうよ。持参金を

持って殺されにいく花嫁……畜生!」

 直記はそこでちょっと深刻なかおをしたが、すぐつまらなそうに生なま欠伸あくびをす

ると、

「よそう、よそう、そんな話はよしたっと。それよりどうなんだ。君は来るのか、来ない

のか」

「ぼくがいったほうがいいのかね」

 私はわざとゆっくりそういうと、さぐるように直記の顔を見直した。直記は怪け訝げん

そうに私の顔を見ていたが、すぐどくどくしい冷笑をうかべると、

「なんだい、いやにもったいをつけやアがって。いやなら止よせ……と、いいたいところ

だが、実をいうとね、やっぱり君に来て貰もらいたいのさ。淋さびしいんだよ。おやじや

お柳を相手じゃ、正直、時間を持てあましちまうじゃないか。ときどき君をイヤがらせた

り、憤おこらせたりしていないと、どうも物足りなくて仕様がねえ。悪趣味だよ。悪趣味

だがこれも君に一半の責任はある。おい、黙ってちゃわからねえ。来るのか、来ないの

か。チェッ、三文小説の原稿なんか鬼に食われてしまえだ。どうせ、ろくな金にゃならね

えンだろう」

 いつもの事ながら、直記にこう真まっ向こうから押して出られると、結局イヤといえな

い私だった。

「よしよし、それでこそ寅さんだ。なんとかいうじゃないか、こんな場合。そうそうわた

しの寅さんか。はっはっはイヤらしい」

 直記は上機嫌だったが、それでいてすぐにも私をつれていくというかと思いのほか、

「それじゃこうしよう。おれは明晩たつ。切符をちゃんと買ってあるんでね。君は二、三

日あとから来たまえ。電報を打ってくれたら駅まで迎えにいってやるよ。おれ? おれは

明晩の八時だが、なに、いいよ、いいよ、送って来なくてもいいよ。おれ、東京駅から乗

るかどうかわからねえ」

 直記はあのとき、なぜあのように狼ろう狽ばいしたのだろう。私は別に送っていくとは

いわなかった。しかし前後の関係からして、かれがあんなに狼狽したのは、私が送ると

思ったからではないだろうか。しかし、そうすると、私に送って来られては、何か都合の

悪いことがあったのだろうか。

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