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第三章 金田一耕助登場--佝僂の瘤(2)
日期:2023-12-21 14:07  点击:242

 主犯は別にあって、八千代さんがそれを手伝っている。……そう考えると、いままで納

得のいかなかったこの事件の謎なぞのすみずみが、いくらか合理的に注釈できるのではな

かろうか。

 今度の事件の場合でも、八千代さんの存在を、この世から抹殺するために演じられたト

リックではあるまいか。八千代さんは第一の事件の重大な容疑者、あるいは参考人とし

て、警察からきびしく追及されていた。それを避けるためには、死んだものになってしま

うのが、いちばん安全な方法なのだ。そうしておいて、別の人間となって更生し、かげで

ペロリと赤い舌を出している。……

 だが、そうすると、主犯はいったい誰なのか。これはもういうまでもなく蜂屋小市だ。

げんに私は、昨夜の稲妻の瞬間に、蜂屋の姿を見たではないか。むろん、ハッキリ顔を見

たわけではない。しかし、蜂屋でなくて、誰があのような、いやらしい姿をしていよう。

そうだ、万事は蜂屋と八千代さんが共謀のうえで仕組んだ仕事なのだ。……

 むろん、これだけでは、まだまだ、納得のいかないところが多かった。どこかまだ辻つ

じ褄つまのあわぬところがある。しかし少なくとも蜂屋ひとりの仕事と考えるよりは、い

くらか謎の中心に接近したような気がする。……

 ああ、八千代さんが共犯者、……この血みどろの道どう化け芝居に、彼女の白い手も一

役買っている。……

 私はあまりの恐ろしさに、全身に、粟あわ粒つぶがいっぱい立つのをおぼえた。なんと

かしてこの恐ろしい考えを打ち消そうと、自分の説のどこかに、不合理なところはないか

と頭をしぼった。しかし、こう考えるほうが少なくともいままでの暗中模索時代よりも一

歩前進したことは、たしかであるように思われた。

「何をお考えですか」

 だしぬけにうしろから声をかけられて、私はギョッとしてふりかえった。そこに立って

いたのは、金田一耕助だった。私はとっさに言葉が出なかった。あまり深く考えこみすぎ

ていたので、急にあたまの転換ができなかったのだ。

「ああ、いや、別に……」

 ねっとり額ににじんでいる汗を、私はあわててハンカチでこすった。悪夢のようないま

の考えに、私は全身、ねっとり汗ばんでいたのだ。

「ひどく考えこんでいましたね。さっきから御様子を拝見していましたよ」

 私は急に不快さがこみあげた。この男、スパイのように私の挙動を監視していたのだろ

うか。

 金田一耕助は、私の顔色にうかんだ不快なかげに気がついたのか、

「いや、べつにあなたを監視していたわけではないのですがね、実は声をかけようと思っ

て待っていたんです。あなたがあまり深く考えこんでいらっしゃるものだから、つい御様

子を拝見していたのです。どうぞ、気になさらないで下さい」

「いや、ああ、べつに……あっちのほうはどうですか」

「いま、取り調べの最中です」

「直記のやつはどうしていますか」

「仙石氏はなかなか抜けられないでしょう。なにしろ中心人物だから……」

 夜明けとともに駆けつけてきた、近くの町の警察官のものものしさに、鬼首村は鼎かな

えのわくような騒ぎであった。都会とちがって田舎いなかでは、歴史の流れが単純であ

る。人殺しなど、何年に一度何十年に一度あるかなしであろう。また、たとえ人殺しが

あったとしても、動機も犯行も単純で、犯人がわからぬというような、複雑な事件はほと

んどない。

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