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第三章 金田一耕助登場--佝僂の瘤(5)
日期:2023-12-21 14:08  点击:265

 金田一耕助も眼を瞠みはって、

「なるほど、すると犯行は、この洞穴のなかで行なわれたのですね」

「だろうと思われますね。いや、犯行は外で行なわれたとしても、少なくとも首くび斬き

り作業だけは、この洞穴のなかでやったにちがいありませんよ。ほら、御覧なさい。あの

刀を……」

 警部補が移動させた懐中電燈の光のなかに、ピカリと浮き出したのは日本刀だ。むろ

ん、ぐっしょり血にぬれている。

「なるほど、すると、首をここで斬りおとして、胴だけを滝へもっていって捨てたのです

ね」

 私がそういうと、金田一耕助はゆっくり首を左右にふりながら、

「いや、そうじゃありますまい。そんなことをすると、犯人の衣い裳しようも血だらけに

なる。犯人はね、胴をひきずって出て、まえの谿流へ投げこんだのですよ。だから、本来

ならば屍し体たいはこのへんにあるべきだったのですが、何しろ、昨夜はものすごい水勢

でしたからね、それに押されて滝まで持っていかれたのです。あなたはごらんにならな

かったから御存じないでしょうが、屍体には恐ろしい骨折やかすり傷がいちめんにあるん

ですよ」

 金田一耕助が説明した。

「ところで、まだほかに何か……」

「あるんですよ。しかも、それが非常に興味のあるしろものなのです」

 警部補はまた懐中電燈の光を移動させた。金田一耕助も私も、思わず眉まゆをひそめ

た。

「なんですか。それは……」

「手にとって御覧なさい。面白いですよ」

 金田一耕助はふしぎそうに拾いあげたが、そのとたん、私は思わずあっと叫んだ。

 それは真っ黒なインバネスとズボン、ほかにつばの広い帽子がある。それからさらに

もっと奇妙なのは、小さな笊ざるのようなものである。その笊には二本の紐ひもがついて

いる。

「佝僂の瘤こぶ!」

 思わずそう口走った私の顔を、金田一耕助はびっくりしたように振り返ったが、すぐう

なずき、

「そうだ。それにちがいない。このインバにズボン、そしてこの笊……私たちが昨夜、稲

妻の一瞬に目撃した、あの佝僂男は蜂屋小市ではなかったのだ。誰かがこれらの衣裳で、

蜂屋小市に、扮ふん装そうしていたのだ」

 なんともいえぬ恐ろしさが、足下からチリチリと這はいあがって来る。私はそれをふり

はらうように、足の位置をおきかえたが、そのとき何やら、カチャリと靴の爪つま先さき

にあたったものがある。

 拾いあげてみるとコムパクトであった。

「おや、それはなんですか」

 警部補も、それにはいままで気がついていなかったらしい。びっくりしたように、私の

掌てのひらをのぞきこんだ。

「コムパクトですよ。土のなかに埋まっていたんです」

「被害者のものでしょうか」

「まさか……」

 私は思わずかるく笑った。

「八千代さんは昨夜、寝間着のままとびだしたのですよ。コムパクトなど持っている筈は

ずがない。誰かほかの女が……」

 私はそこで思わず言葉を切った。そして、ギョッとして金田一耕助と顔を見合わせた。

ああ、私のあの恐ろしい疑惑はあたっていたのではなかろうか。そしてここにひとり、新

たなる女性の登場人物があったのではあるまいか。しかし、それは誰だろう。……

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