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第八章 抜け穴の冒険 二(5)
日期:2023-12-26 15:55  点击:301

 いい忘れたがこの抜け穴は、一直線についているのではない。羊腸というほどではない

としても、あちこちで湾曲し、屈折していた。思うに地層の関係で、掘りやすいところを

掘りすすめていったのだろう。

 歩み板を渡ったあたりでは、あいかわらず漏水や落盤がはげしかったが、進むにした

がって空気が乾燥し、漏水も少なくなってきた。気がつくと道はゆるやかな傾斜をつくっ

て、少しずつ登り調子になっている。そろそろ出口が近いのだろう。

「それにしても、金田一先生、さっきのやつ、ここでなにをしてたんでしょうねえ」

 先頭に立った田原警部補がたずねた。

「ぼくもさっきからそれを考えてるんですが、どうもわかりませんね。このトンネルのな

かになにがあるのか……」

「主任さん、こりゃむこうへかえったら、さっそくみんなを点呼してみる必要があります

ぜ。われわれがこのトンネルへ潜りこんでいたあいだ、どこでなにをしていたか……」

「じゃ、君はさっきの男を、いま名琅荘にいるだれかだというのかい」

「確信はありませんがね。いちおう疑ってみてもいいんじゃありませんか。金田一先生は

どうです」

「いちおう、やってごらんになるんですね。しかし……」

「しかし……?」

「全部アリバイなしか、全部アリバイありってことになるんじゃありませんか」

「あっはっは、大きにそうかもしれませんな」

 そこへ小山刑事がかえってきて、

「だめです。怪しいやつの姿はどこにも見えません」

「あたりまえよ。てめえみてえなドジにとっつかまるような、チョロッコイやつじゃね

え。いや、ドジはこのおれかな。あっはっは」

「小山君、出口はまだ遠いのかい」

「いえ、もうすぐです。そこのカーブを曲がると階段が見えてきます」

 その階段のあたりまでくると、空気はいよいよ乾燥していて、煉瓦もボロボロに風化し

ている。その階段には手すりがついていたらしいが、いまは跡形もない。

 階段をのぼっていくと、二畳敷きくらいの踊り場になっているが、まっさきにそれを

登っていった田原警部補は、ギョッとして思わずうしろにたじろいだ。小山刑事が背後か

らつっかい棒をしなければ、階段から仰向けに転落していたかもしれない。

 懐中電灯の光芒のなかに、だれかそこに立っている。しかもそいつは身み動じろぎもせ

ず、うえからこちらをにらんでいるのだ。

「だ、だれだ! おまえは!」

 そのとたんうしろからつっかい棒をしていた小山刑事が、クックッと咽喉のおくで笑っ

た。

「やあ、御免なさい、主任さん、仁王ですよ。仁王の片割れですよ。木彫りの仁王さんで

すよ」

「なに、仁王……?」

 田原警部補がもういちど、懐中電灯の光でなでまわすと、なるほどそれは等身大の木彫

りの仁王だった。眼をいからせ、くわっと口を開いたところが凄すさまじい。

 井川老刑事と金田一耕助もあとからあがってきて、

「なアるほど、これは凄すげえや。暗闇のなかでだしぬけに、こんなやつにぶつかっ

ちゃ、だれだって肝をつぶさあ」

 金田一耕助もそばへよってきて、懐中電灯の光でその仁王像をあらためながら、

「これは金剛像のほうですね。もうひとつの口を閉じた力士像はどこにあるんです」

「ちょっと待ってください。この仁王がこの出口の番人になってるんですがね。ほら、そ

の仁王の立っている床を見てください」

 小山刑事が懐中電灯の光で示すところを見ると、この仁王は高さ八寸くらいのところに

ある。半径半間くらいの半円型の板のうえに立っているのだが、その板のうえにぬれたゴ

ム靴の跡がふたつついている。そのゴム靴の爪先はふたつとも仁王のほうをむいている

が、少しずれているところを見ると、後にむきをかえたらしい。

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