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第十一章 密室の鍵 二(3)
日期:2023-12-28 13:52  点击:287

 金田一耕助はまた身ぶるいが出る気持ちだった。

「ところでお糸さん、こちらの刑事さんのお話によると、あなた篠崎さんとごいっしょに

あの死体を発見なすったとき、ベッドの下までのぞかれたそうですが、犯人がまだあの部

屋に潜んでいるのではないかと思われたのですか」

「とんでもない、そんな恐ろしいこと……ではあのじぶん犯人はまだあのお部屋にいたと

でも……」

「じゃ、ばあさん、あんたなぜベッドの下までのぞいたんだ。あんたの捜してたのが犯人

でなかったとすると、いったいなにを捜してたんだい」

「タマ子ですよ、刑事さん。タマ子はいったいどこへいったんでしょう」

 いままで空っとぼけていたお糸さんの顔に、急に深くなった怯おびえの色はどうやら本

物らしかった。

「お糸さん、あの子がどうかしたというのかね」

 と、田原警部補が膝を乗り出した。

「いいえなあ、主任さん、タマ子がけさから姿が見えないんでございますよ。それにゆう

べちょっとおかしなことがございましてなあ」

「おかしなことというと?」

「ゆうべ、ほら、せんぐりせんぐりここへ呼ばれて、お取り調べを受けましたでしょう

が。あの子はわりに早うございましたわなあ。そのあとであたしのところへまいりまし

て、こんどのことでなにか話があると、こう申しますんでございますよ」

「こんどのことで……と、いったのかい?」

 と、井川刑事も乗り出してきた。

「はい、いまから考えると顔色なんかも、なにかこう、思いつめたようでございましたわ

ね。しかし、こちらはなにせ気が転倒しておりましたし、まあ、いろいろ気ぜわしいさい

ちゅうでございましょう。話があるならまたあとでと、追っ払っちまったんでございます

よ。それがけさから姿が見えませんでしょ。なんとなく気になりましてなあ」

「それで、お糸さんはベッドの下までのぞいてみたんですか」

「金田一先生、お笑いにならないでくださいよ。こういうのを年寄りの取り越し苦労とい

うのでございましょうか。天坊さんがああいうことになっておいでなさいましたでしょ。

それでハッとしまして、あの子ももしやと……ああ、いやだ、いやだ。鶴亀鶴亀」

「ばあさん、そりゃおまはんの取り越し苦労だ。あの子また混血児のとこへしけこんでる

んじゃねえのか。だいぶんご親密のようだから」

「ところが、刑事さん、ついいましがた譲治が帰ってきたんで、さっそくとっつかまえて

聞いてみたんですが、あの子も知らんというんでございますよ。きのうの夕方倉庫のまえ

で別れたきりだって」

 そうだ、ゆうべ風呂場のなかでも譲治はそういっていた。金田一耕助はこみあげてくる

不安をおさえて、

「そうすると、お糸さん、あの子はきのうここで主任さんに申し上げたことのほかに、な

にか知ってることがあったらしいとおっしゃるんですか」

「そ、そ、それなんでございますよ。あのとき親身になってきいてやればよかったの

……」

「それで、お糸さん、あんたがタマ子を最後に見たのは……?」

「それなんでございますよ、主任さん、さっきからいろいろ考えてみますと、あれ十時半

ごろのことでございましたわなあ。奥様が当分旦那様と寝所をわかちたい、それについて

日本座敷のほうへお寝間をしつらえてほしいと、これ旦那様がいうておいでになったんで

ございますよ。そのとき本来ならあたしがいくべきところ、ちょうどあなたがたが抜け穴

へ、入ろうかどうしようかというお話がございましたときですけん、タマ子に一切まかせ

たのでございますわなあ。それっきりなんでございますよ、あの子の姿を見たのは」

 そうだ、篠崎慎吾が倭文子の眠りにつくのを待って、お入側へ出てくると、そこにタマ

子が待っていたという。そのときタマ子は慎吾にむかって、なにか重大な話があるといっ

たという。それが十一時二十分だったというのだから、時間的にも符節があう。それ以後

だれもタマ子の姿を見たものはないのではないか。

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