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第十四章  密室を開く 二(5)_迷路荘の惨劇(迷路庄的惨剧)_横沟正史_日本名家名篇_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3341

「田原さん」

「はあ」

「鑑識課にも宿直はいるんでしょう。すぐこれを持たせて現像し、引き伸ばしてくださ

い。少なくとも顔がハッキリする程度に。これは早ければ早いほどいいのです」

「金田一先生!」

 井川刑事は鼻をつまらせて、

「ありがとうございます」

「井川さん、いうまでもないことですが、絶対内密に。それからあなた用事をすませた

ら、表の居間へ引きかえしてください。これからいよいよ、密室のトリックの種明かしと

いきますから」

「承知しました」

 足早に出ていく井川刑事のあとから、金田一耕助と田原警部補も居間へ出た。井川刑事

はすぐ引き返してきて、

「いいあんばいに江藤が起きていたので署へ走らせました。一時間……いや往復の時間も

ふくめて、二時間もすればかえってくるでしょう」

「金田一先生、天坊さんはあの写真をタネにだれかを脅ゆ請すっていたんでしょうね」

 田原警部補はまだ感動がさめやらぬ調子である。

「人間も落ちぶれると浅ましくなるという、これはひとつの実例でしょうね。しかも、脅

きよう喝かつ者しやはつねに被脅喝者に生命をねらわれるという、もうひとつの実例でも

あるわけです。では密室のトリックの種明かしといきましょうか」

「はあ、どうぞ」

「お願いします」

 田原警部補も井川刑事もひどく敬けい虔けんな態度になっている。金田一耕助は大いに

テレて、テレたときこの男のくせで、めったやたらとモジャモジャ頭をかきまわしなが

ら、いくらかどもりぎみで、

「おふたりとも笑わないでくださいよ。こ、これ、まるで子供だましみたいなトリックで

すからね。しかも、これ、わたしが考え出したことじゃなく、若いころこういうトリック

を使った、外国の探偵小説を読んだような気がするんです。主任さん、この鍵はこうして

鎌倉彫りのお盆のうえにのっかってます。しかも、このお盆のうえにはブロンズの像がお

いてある。ところがお糸さんの話によると、このブロンズ像はいつも大理石のマントル

ピースのうえにじかにおいてあり、このお盆はふだん小物入れとして、寝室のサイド・

テーブルのうえにおいてあったということでしたね」

「はあ、それがなにか……?」

「犯人はなぜこのお盆を必要としたのでしょう。この大理石じゃ針が立たなかったからで

はないでしょうか」

「針……?」

「はあ、これ……」

 と、金田一耕助が大テレにテレながら、袂たもとのなかから取り出したのは、白木綿の

糸をとおした一本の縫い針である。糸はふたえになっていてそうとうの長さをもってい

る。田原警部補と井川刑事はおもわず大きく眼を見張った。

「この糸と針、お杉さんの針箱からチョロまかしてきたんです。ぼくが糸と針とに関心を

もってるってこと、だれにもしられたくなかったものですからね」

 金田一耕助はその針をしっかり鎌倉彫りのお盆に突っ立てると、

「このお盆にはゴタゴタと二匹の竜が浮き彫りにされている。だから針の痕があっても気

づかれなかったわけですね。あとで精密に検査してください。どこかに針の痕があるはず

ですから」

 金田一耕助は針の安定度をたしかめてから、鍵をとりあげ、糸をたぐりながらドアのほ

うへいった。そして、半開きになっているドアのうえの回転窓から、糸のさきを廊下のほ

うへ投げ出しておいて、自分もドアから外へ出ていった。カチッとドアに鍵をかける音が

する。ドアの外にはおあつらえむきの支那製の頑丈な花瓶台がある。金田一耕助はその台

のうえへあがって、回転窓からなかをのぞくと、

「さあ、これが密室のトリックの種明かしですよ」

 糸はいまマントルピースのうえのお盆から、回転窓までピーンと一直線に張られてい

る。まもなく糸にぶら下がった鍵がスルスルと、回転窓から部屋のなかへ侵入してきた。

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