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24 反乱
日期:2024-06-28 13:37  点击:291
24 反乱
 葉文潔が当時のことをひととおり話し終えると、カフェテリアに沈黙が降りた。三体世界とのファースト?コンタクトについて、一部始終をちゃんと聞いたのははじめてというメンバーが多かったようだ。汪淼ワン?ミャオも、眼前の危機や恐怖を忘れて、文潔の物語に心底引き込まれ、思わずこうたずねた。
「じゃあ、三体協会はいったいどうやって、現在のような規模にまで発展したんですか」「それを説明するには、エヴァンズと知り合ったことから話さないとね」文潔は言った。
「……でも、そのあたりの事情は、ここにいる全員が知っているはず。いまその話をするのは時間の無駄だから、いつかまた、汪さんだけに話すわ。もっとも、その機会があるかどうかはあなた次第よ、汪さん。いまは、あなたのナノマテリアルの話をしましょう」「あなたが言う〝主?は、どうしてそんなにナノマテリアルのことを気にするんです」汪淼がたずねた。
「それが人類を地球の引力から解放し、いままでよりはるかに大きな規模の宇宙開発を可能にするからよ」
「軌道エレベーターのことですか」ふと思い当たって、汪淼は言った。
「そう。そんな超高強度マテリアルがいったん量産されはじめたら、地上から静止軌道まで直通の宇宙エレベーターが技術的に建設可能になる。主からすれば、それはただの小さな発明だけど、地球人類からすればその意義は大きい。人類は軌道エレベーターを使って地球近傍の宇宙空間に出て、大規模な防御システムを建設することが可能となる。だから、早いうちにナノマテリアル技術をつぶしてしまう必要がある」「カウントダウンが終わるとどうなるんです」汪淼は自分がもっとも恐れている問題をたずねてみた。
 文潔が微笑んだ。「さあねえ」
「でも、ぼくを止めたって無意味ですよ これは基礎研究じゃない。われわれがすでに発見した事実をもとにして、だれかほかの人がその先の道を開くことができる」汪淼の声は大きいが、不安の響きがあった。
「そう、たしかに無益ね。研究者の精神を揺さぶることのほうがはるかに効果的。でも、汪さんが言うように、あなたの仕事は応用研究。わたしたちの方法は、基礎研究に対して用いるほうがはるかに効果的なの」
「基礎研究といえば、お嬢さんはどんなふうにして亡くなったんですか」 この質問に、文潔は何秒か沈黙した。その目がかすかに曇るのに汪淼は気づいた。しかし、文潔はすぐまた口を開き、話をつづけた。
「比類なき力を持つわれらが主に比べれば、わたしたちがすることはすべて無意味。だからわたしたちは、やれることをやるだけよ」
 文潔が口を閉じた瞬間、ドーンという大きな音が響き渡り、カフェテリアの両開きのドアが押し開けられたかと思うと、サブマシンガンを携えた兵士たちが突入してきた。武装警察でも正規軍でもない。壁に沿って音もなく移動してくると、たちまち三体協会の反乱分子たちを包囲した。
 最後に入ってきたのは史強シー?チアンだった。革ジャケットの前を開け、右手に拳銃の銃身のほうを握っている。そのため、銃把がハンマーヘッドのように見えた。
 史強は威圧的にあたりを見渡してから、いきなり前にとびだした。逆さまに持った拳銃が一閃し、金属が頭蓋骨にぶつかる鈍い音がした。三体協会の反乱分子がひとり、床にくずおれた。抜こうとしていたピストルが手を離れ、すこし離れたところに落ちた。兵士たちの一団のうち数人がサブマシンガンを上に向けて発砲し、天井から粉塵や破片が降ってきた。だれかが汪淼の肩を掴んで三体協会メンバーの列から引き離し、兵士たちの背後の安全地帯へと連れていった。
「武器をテーブルの上に置け 次になにかしようとしたやつは容赦なく撃ち殺す」史強がうしろにいるサブマシンガンの列を指さして叫んだ。「おまえらが死ぬことを恐れてないのは知っているが、こっちにも命を捨てる覚悟はある。前もって言っておくが、警察のノーマルな手続きや法律は、おまえらには適用されないからそう思え。人間が決めた戦争のルールさえ適用されない。おまえらが全人類を敵にしている以上、こっちにはなんのためらいもない」
 三体協会側に多少のざわつきがあったものの、パニックを起こす者はいなかった。文潔はなにも言わず、無表情に立っている。
 そのときとつぜん、三体協会の集団から三人が前にとびだしてきた。中のひとりは、潘寒ファン?ハンの首を折った美少女だった。三人は、いまもくるくるまわりつづけている三体のァ≈ジェに駆け寄り、それぞれがひとつずつ金属球を胸の前で抱きかかえた。
 美しい少女は、輝く金属球を両手に持つと、これからボールの演技をはじめる新体操の選手のように高く差し上げ、口もとに笑みを浮かべ、兵士たちに向かって心地よい声で言った。「みなさん、わたしたちがいま手にしているのは、三つの核爆弾です。それぞれ、およそ一?五キロトンの破壊力がある。そう大きくはありません、わたしたちは小さなおもちゃが好きなので。これが起爆スイッチです」 カフェテリア内の全員が凍りついた。唯一の例外は史強だった。逆さに握っていたピストルを左脇下のホルダーにおさめると、顔色ひとつ変えずに拍手した。
「われわれの要求はシンプルです」少女は史強や兵士を恐れるようすもなく、おだやかに言った。「総帥を解放してください。そのあとは、なんでもあなたたちの求めるゲームにつきあいましょう」
「わたしは同志たちと行動をともにします」文潔は静かに言った。
「あの娘の言っていることがほんとうかどうか、たしかめられるか」史強は、となりにいる、爆発物処理担当の係官に向かって小声でたずねた。
 爆発物処理官は、金属球を持つ三人の前に、ビニール袋をひとつ投げ出した。三人のひとり、男性の協会メンバーが袋を拾い上げ、中に入っていたばね秤をとりだした。金属球を袋に入れて、ばね秤にひっかけると、高く持ち上げた。ばね秤ばかりの目盛は半分ほどのところまで伸び、そこで止まった。
 少女はくすっと笑った。爆発物処理官も、莫迦にしたような笑い声をあげた。
 協会メンバーの男は袋から球をとりだし、床に投げ落とした。もうひとりの男性協会員が秤と袋をとって、同じ手順をくりかえし、やはり金属球を床に投げ落とした。
 少女はまた笑い声をあげ、今度は自分でビニール袋をとって、球を中に入れ、ばね秤にかける。そのとたん、秤の目盛りが一気にいちばん下まで落ちこんだ。
 爆発物処理官の笑みが凍りついた。そして、史強にささやいた。「くそっ ひとつは本物だ」
 史強はなおも平然としている。
「すくなくとも、重元素が──核分裂性物質が──あの中に入っているのはたしかだ。起爆システムが機能するかどうかはわからない」爆発物処理官が説明した。
 兵士たちの銃に装着されているライトの光が、核爆弾を持つ少女に集中した。火薬に換算して一?五キロトンの破壊力を手にした少女は、スポットライトに照らされて舞台に立ち、拍手喝采を浴びているかのように華やかな笑みを浮かべた。
「ひとつ方法がある。あの球を撃て」爆発物処理官が史強の耳元でささやいた。
「爆発しないのか」
「外側の通常爆薬は爆発するだろうが、爆発力が分散するから、中心にある核分裂性物質が核爆発を起こすのに必要な爆縮は起きない」
 史強は核爆弾を持つ少女を見つめたまま、口を開かない。
「狙撃手は」
 史強はほとんどわからないほどかすかに首を振った。「配置できる場所がない。それに、あの娘は勘が鋭い。狙撃手が照準を合わせれば、すぐに気づかれる」 史強は、兵士の列を押し分けてまっすぐ前に歩いていくと、フロアのぽっかり空いた場所の真ん中に立った。
「止まれ」少女が警告した。右手の親指を起爆スイッチの上に置き、史強をじっと見つめる。ネイルアートがライトの光にきらめいた。
「まあ、落ち着けよ。おまえが知りたい情報がある」史強は少女と七、八メートル離れた場所に立ち、ジャケットのポケットから封筒をとりだした。「おまえの母親が見つかった」
 少女の熱っぽい目が曇った。このときだけは、彼女の瞳は、心の中が覗ける窓だった。
 史強はその隙にさらに二歩近づき、少女との距離を五メートルくらいにまで縮めた。少女は核爆弾をかざして視線で警告したが、すでに注意力が削がれていた。さっき偽の核爆弾を投げ捨てたふたりのうちのひとりが史強に歩み寄り、封筒を受けとろうと手を伸ばした。その陰になって少女の視線がさえぎられた瞬間、史強は電光石火の速さで銃を抜いた。少女に見えたのは、封筒をとろうとする男の耳のあたりで閃いたマズルフラッシュだけだった。次の瞬間、彼女が手にした金属球が爆発した。
 くぐもった爆発音が聞こえたあと、汪淼の目には暗闇しか見えなくなった。だれかにひっぱられてカフェテリアを抜け出すと、戸口から濃い黄色の煙が噴き出していた。カフェテリアの中は、叫び声と銃声が入り乱れている。ときおり人々が煙を抜けてカフェテリアから飛び出してくる。汪淼は身を起こし、カフェテリアに戻ろうとしたが、爆発物処理官が腰に手をまわして引き止めた。
「気をつけろ。放射性物質だ」
 混乱はやがて静まった。三体協会メンバーのうち十数名が銃撃戦で死亡し、残りは──文潔を含む二百名以上が──逮捕された。爆発によって少女は血まみれの肉塊になりはてたが、核分裂に失敗した爆弾による死者は彼女ひとりだけだった。史強の封筒を受けとろうとした男は、爆発で重傷を負った。彼が盾になってくれたおかげで、史強は軽傷で済んだものの、爆発時にカフェテリアにいた他の人たちと同じく、核物質に曝露したことで重度の放射線被曝を被っている。
 救急車の中で寝台に横たわる史強を、汪淼は後部扉の小窓越しに見つめた。史強の頭の傷は、まだ出血が止まっていない。傷口に包帯を巻いている看護師は、透明の防護服姿だった。汪淼は史強と携帯電話で話すことができた。
「あの少女の母親って、だれだったんだ」汪淼はたずねた。
 史強は歯を見せて笑った。「知るもんか。当てずっぽうだ。ああいう娘は、たいがい母親とのあいだに問題を抱えてる。こんな仕事を二十年以上もやってると、人の心が読めるようになるんだよ」
「自説が正しかったと証明されてうれしいだろ。ほんとうに裏で操っている黒幕がいたんだから」汪淼は車内の史強に見えることを祈りながら、無理やり笑顔をつくった。
「汪先生、正しかったのはあんたのほうだ」史強は笑って首を振った。「まさか本物のくそエイリアンが関わってるなんて、おれは思いもしなかったよ」
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07/05 05:41
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