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25 雷志成レイ·ジーチョン、楊衛寧ヤン·ウェイニンの死
日期:2024-06-28 13:37  点击:217
 25 雷志成レイ·ジーチョン、楊衛寧ヤン·ウェイニンの死
尋問者 姓名は
葉文潔 葉文潔イエ?ウェンジエです。
尋問者 生年月日は
葉文潔 一九四三年六月です。
尋問者 職業は
葉文潔 ある大学で天体物理学科の教授をしていましたが、二〇〇四年に退職しました。
尋問者 健康状態に鑑みて、尋問中、いつでも希望するときに休憩を認めますので。
葉文潔 ありがとうございます。でも、だいじょうぶです。
尋問者 いまこちらで行っているのは通常の犯罪捜査です。政治的に扱いのむずかしい問題には立ち入りません。こちらとしては、すみやかに捜査を完了したいと思っていますので、ご協力をおねがいします。
葉文潔 言いたいことはよくわかります。ええ、協力しますとも。
尋問者 捜査資料によると、紅岸基地勤務時代、あなたには殺人の嫌疑がかけられていましたね
葉文潔 ふたりの人物を殺害しました。
尋問者 いつですか
葉文潔 一九七九年十月二十一日の午後です。
尋問者 被害者の姓名は
葉文潔 基地政治委員の雷志成と、基地の技術者で、わたしの夫である楊衛寧です。
尋問者 殺人の動機を述べてください。
葉文潔 そちらでは……当時の状況について、基本的な背景を理解されていると考えてよろしいですか
尋問者 基本的なことは理解しています。わからなければ質問します。
葉文潔 わかりました。地球外知性からのメッセージを受信し、返信したその日、メッセージを受信したのはわたしだけではありませんでした。雷政治委員も受信していたのです。
 雷政治委員はその頃の典型的な政治幹部でしたから、政治に関してはアンテナがきわめて鋭敏で、あらゆる問題をイデァ№ギー的なフィルターを通して見ていました。彼は、紅岸基地の大部分の技術スタッフに内緒で、メインコンピュータのバックグラウンドで、長期にわたって、ある小さなプログラムを実行していました。そのプログラムは、送信と受信のバッファ領域をつねに監視し、その結果を暗号化した隠しファイルに保存していたのです。こうすることで、紅岸システムが送受信した情報すべてについて、彼だけが読めるコピーが残されることになります。このコピーによって、雷政治委員は紅岸アンテナが受信した地球外知性からのメッセージを発見したのです。
 わたしが夜明けの太陽に向かって返信を送ったその日の午後、医務室で妊娠を知らされたすぐあと、雷志成はわたしをァ≌ィスに呼び出しました。彼のデスクのモニターには、前夜わたしが受信した三体世界からのメッセージが表示されていました。
「最初のメッセージを受信してから八時間以上経過しているのに、きみはまだなにも報告していない。そればかりか、ァ£ジナルのメッセージを消去し、おそらくコピーを保存している。違うか」
 わたしは顔を伏せたまま、なにも言いませんでした。
「次の手もお見通しだ。返信するつもりなんだろう。わたしの発見が間に合わなかったら、人類文明すべてがきみの手で滅ぼされていたところだ もちろん、わたしが他星系からの侵略を恐れていると言いたいわけではない。百万歩ゆずって、もしほんとうに侵略が起こったとしても、宇宙からの侵略者は、人民による正義の戦争の大海に沈むだけだ」 それを聞いて、わたしがもうとっくに返信したことを彼はまだ知らないんだと気づきました。わたしが返信メッセージを送信バッファに入れたとき、たまたま通常のファイル管理システムを使わなかったことで、幸運にも雷政治委員の監視プログラムを回避することになったのです。
「葉文潔、きみがいつかこんなことをしでかす可能性と能力があるのはわかっていた。党と人民に対して、きみはずっと深い憎しみを抱えて生きてきた。報復の機会があれば逃さないだろう。自分の行動の結果はわかるか」
 もちろんわかっていたので、うなずきました。しばらく沈黙がつづき、次に雷志成が発した言葉は予想外のものでした。
「葉文潔、きみに関しては──同情の余地はまったくない。きみは最初からずっと、人民を敵とする反動分子だった。しかし楊衛寧は、わたしの長年の戦友だ。きみの道連れになって彼が破滅するのは見たくない。まだ生まれていない彼の子どもにまで累が及ぶことは、もちろん容認しがたい。きみは妊娠しているんだろう」 雷政治委員の言葉は根拠のない推測ではありませんでした。その当時、もしわたしの行為が明るみに出たら、それに関わっていたかどうかに関係なく、夫は巻き添えになっていたでしょう。これから生まれてくる子どもも、当然、無縁ではありません。
 雷志成は声を押し殺してこう言いました。「いまのところ、この件はわれわれふたりしか知らない。いまやるべきことは、きみの行動の影響を最小限にとどめることだ。きみはなにもなかったようにふるまい、だれにも他言してはいけない。楊衛寧にもだ。残りの問題は、わたしが処理する。葉文潔、わたしを信じてくれ。きみさえ協力してくれれば、恐ろしい結果を避けることができる」
 わたしはすぐに雷志成の本心がわかりました。彼は地球外知的生命を最初に発見した人物になりたかったのです。歴史の教科書に自分の名前を載せる千載一遇の機会でしたから。
 わたしは言われたとおりにすると請け合い、ァ≌ィスを出ました。そのときにはもう、すべてを計画し、決意をかためていました。
 わたしは小さなスパナを持って、受信システム処理モジュール用の設備室に入りました。わたしはしじゅう設備の点検をしているので、だれも気に留めません。メインキャビネットを開けて、アース線の固定ボルトを慎重にゆるめました。その結果、アースの電気抵抗が?オームからオームへと跳ね上がり、受信システムに対する干渉が急激に増大しました。
 当直のァ≮レーターはすぐに問題に気がつきました。この種の不具合は前々から珍しくなかったので、アース線が原因だと診断することは簡単でした。ただし彼は、アース線のこちら側で問題が起きているとは思いもしませんでした。なぜならそこはしっかり固定されていて、だれも動かさない部分でしたし、わたしも「さっき点検した」と言ったからです。
 レーダー峰の頂は、珍しい地質構造になっています。十数メートルの厚さの粘土層で覆われていますが、その粘土層は導電性が低く、アース線を深く埋めないと、接地抵抗が大きすぎることになります。かといって、あまり深くまで埋めることもできません。粘土層は導線に対して強い腐食作用があり、時間が経てば中間部分のアース線が腐食して、断線するからです。けっきょく、唯一の解決策は、崖のへりからアース線を長く垂らし、先端が粘土層の下に届いたら、そこで崖の中に埋め込むことでした。この方法をとっても、アースはやはり不安定で、抵抗が基準値を超えることがしばしばありました。問題が発生するときはいつも、アース線を崖に埋めた箇所が原因でした。そのたびに、メンテナンス担当者が、崖のへりからロープを伝って下に降りていって修理する必要があります。
 このときも、当直のァ≮レーターがメンテナンス?チームに不具合を伝え、チームに所属する兵士のひとりが鉄柱にロープを結び、崖を降りていきました。下で三十分ほど苦労した挙げ句、汗だくになって上がってきて、故障が見当たらないと言いました。次の受信セッションを遅らせる必要が生じそうな雲行きだったので、基地司令部に報告に赴くしかありませんでした。わたしは崖のてっぺんの鉄柱のそばで待機していました。予想どおり、報告に行った兵士をともなって、雷志成が現場にやってきました。
 正直な話、雷志成はきわめて仕事熱心で、この時代の政治幹部に求められることを忠実に遂行していました。すなわち、大衆の一部となり、つねに前線に立つことです。もしかしたら、すべてはうわべだけの演技だったのかもしれませんが、だとしても彼はほんとうに優秀な演技者でした。基地で急を要する作業、困難な作業、危険な作業、つらい作業があれば、雷志成はかならず、みずから進んでそれを引き受けていました。そして、だれよりも多く彼が率先して担当した作業のひとつが、アース線の修理という、危険でつらい仕事でした。この作業にそれほど高い技術は要りませんが、経験は必要です。故障にはさまざまな原因があります。アース線が地表に露出していることで生じる──検知しにくい──接触不良とか、アース線を埋め込んだ箇所の土壌が乾燥しすぎているために起きる導電性の低下とか。当時は、屋外メンテナンスを担当していた志願兵が異動したばかりで、現場スタッフのだれもが経験に乏しかったので、わたしは雷政治委員がやってくるだろうと予想していました。
 雷政治委員はわたしには目もくれず、安全ベルトを結ぶと、ロープを伝って下に降りていきました。わたしは口実をつくって、雷を連れてきた兵士をその場から追い払うと、ポケットから折り畳み式の鋸のこぎりをとりだしました。長い鋸を三つに折って持ち運ぶタイプで、畳んだ状態のまま、三枚重なったブレードでロープを切ると、切断面がぼろぼろになり、あとから調べても、一見したところ、道具を使って切断したようには見えないはずでした。
 ちょうどそのとき、夫の楊衛寧がやって来ました。
 事情を話すと、夫は崖の下を見ながらこう言いました。崖に埋め込んだアース端子を点検するにはまず掘り出す必要がある。雷政治委員ひとりだけでは手に余るだろうから、自分も降りて手伝おう。そして夫は、兵士が置いていった安全ベルトを装着しました。べつのロープを使ったほうがいいとわたしは言いましたが、彼は、そんな必要はない、このロープならじゅうぶんふたりの体重を支えられると言いました。どうしてもべつのロープを使うようにとわたしが言い張ると、じゃあ、ロープをとってきてくれと彼は言いました。わたしがもう一本のロープを持って急いで崖に戻ってみると、夫はすでに、雷志成が使っているロープを伝って下に降りていました。見下ろすと、夫と雷志成はもう点検を終え、雷志成が上になって、同じ一本のロープを伝って登ってくるところでした。
 このときを逃せば、もうチャンスはないでしょう。わたしは折り畳み式の鋸をもう一度とりだして、ロープを切断しました。
尋問者 ひとつおたずねしたいのですが……答えは記録しません。そのとき、どのように感じましたか
葉文潔 冷静でした。なんの感情も交えずに行動しました。わたしはついに、自分を捧げることのできる目標を見出したのです。自分であれ他人であれ、そのためにどんな代償を払うことになってもかまいませんでした。この目標のために、全人類が前代未聞の大きな代償を支払うことになるのもわかっていました。この一件は、そのごく小さなはじまりでしかなかったのです。
尋問者 わかりました。つづけてください。
葉文潔 驚いたような短い叫び声が二度、それから体が崖の下の岩場にぶつかる音が聞こえました。しばらくして、崖の下を流れる谷川が赤く染まるのが見えました……この件についてわたしが話せることはこれでぜんぶです。
尋問者 わかりました。これは陳述書です。よく確認して、もしまちがいがなければ、ここにサインしてください。
 
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07/05 05:43
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