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27 エヴァンズ
日期:2024-06-28 13:39  点击:218
27 エヴァンズ
 大学に戻ってから半年後、葉文潔イエ?ウェンジエはある大きなプロジェクトを担当することになった。それは、大規模な電波天文観測基地の設計だった。文潔は、プロジェクト?メンバーといっしょに全国各地を旅して、基地の候補地を探した。最初に考慮すべき問題は、純粋に技術的な条件だった。従来の天文観測と違って、電波天文観測は、大気の質や可視光線による干渉についての要求水準はさほど高くない一方、電波障害は最小限に抑える必要がある。いろんな地方をまわった中から選び出した、電磁環境的にもっともクリーンな場所は、西北地方にある辺鄙な山中だった。
 山肌の黄土は、ほとんど植生がなかった。浸食によってできた無数の地溝のおかげで、山は老人の顔のようにしわだらけに見えた。いくつか候補地に目星をつけたあと、プロジェクトチームは、休息のため、いまも住人の大部分が穴居生活を送っている村に立ち寄った。村の生産隊長は、文潔をインテリだと思ったらしく、外国語は話せるのかとたずねてきた。どの国の言葉ですかと聞き返すと、隊長は、それは知らないが、もし話せるのなら、人をやって山から白求恩ベチューンを呼んでくる、すこし彼と相談したいことがあるから、と言った。
「白求恩」文潔は驚いて訊き返した。
「本名がわがんねがら、あの外人のことをそう呼んでる」 白求恩は、一九三八年一九三九年に延安で医療活動に従事したカナダ出身の外科医の中国名
「医者なの」
「いや、山に樹を植えでる。もう三年ちがぐなっかな」「植樹 なんのために」
「鳥のためだと。絶滅しがげでる鳥みでえだ」
 文潔と同僚たちはその話に興味を惹かれ、隊長に案内してもらって現場を見に出かけた。山道を歩いて、小高い山の頂上に登ると、隊長はあそこだと指さして教えてくれた。
この痩せた黄土の山で、そこだけが緑の木々に覆われている──まるで、黄ばんだキャンバスの上に鮮やかな緑の絵の具をうっかりこぼしてしまったみたいだった。
 文潔たち一行は、すぐに問題の外国人を見つけた。金髪で、青い目をしているが、着ているものはぼろぼろのジーンズだし、皮膚の色も、現地の人と同じように黄色がかった黒に日焼けしている。見た目は、この地で生まれてずっと農業をしている村人と大差ない。
男は、来訪者にほとんど興味がなさそうだったが、マイク?エヴァンズだと名乗った。国籍は告げなかったが、話す英語には明らかなアメリカ訛りがあった。
 エヴァンズは、林の中にある二軒の崩れそうな土造りの家に住んでいた。部屋には、鍬くわ、スコップ、枝を落とすのに使う鋸など、いずれもこの地方で使われている質の悪い道具類がたくさん置いてあった。おんぼろベッドや簡単ないくつかの炊事道具の上に、西北地方の砂埃が降り積もっている。ベッドに積み上がった大量の本は、その大部分が生物学関係のものだった。文潔はその中に、ピーター?シンガーの『動物の解放』があることに気づいた。
 現代的なものといえば、小さなラジオが一台あるだけ。内蔵の単三乾電池は切れているらしく、リード線で外部の単一乾電池につないである。そのほかには、古い望遠鏡が一台あった。
 エヴァンズは、客に飲ませるものがなにもないことを謝罪した。コーヒーはとっくに切れているし、水はあるが、自分のぶんしかコップがない。
「ここでどんな仕事をなさっているのか伺っても」と文潔の同僚がたずねた。
「命を救う仕事だよ」
「命を救う……この村の人たちの」とべつのひとりがたずねた。「たしかにここの生活環境は劣悪で──」
「あんたらはどうしてそうなんだ」エヴァンズはとつぜん怒りをあらわにした。「人間の命を救うことだけが重要なのか ほかのものを救うのは小さなことなのか だれが人類にそんな偉い地位を与えた いや、人間には救いなんか必要ないんだ。人間はすでに、分不相応にいい生活を送っているんだから」
「鳥を救おうとしているそうですが」
「ああ。ツバメだよ。北西褐色ツバメの亜種だ。学名は長いから言わない。毎年春になると、彼らは昔から決まっている渡りルートを通って、南方から帰ってくる。そのとき巣づくりをする場所がここなんだ。だが、ここの緑は年々伐採されて減少し、巣をかけられる樹林が見つからなくなっている。ぼくが知ったときには、群れの数はすでに一万羽に満たない状態だった。この減少率でいけば、五年以内に絶滅するだろう。いまぼくが植えている樹林は、彼らの一部にとってねぐらになり、群れの数はすでに回復しつつある。当然、もっと多く植樹して、このエデンの園の面積を拡大するつもりだ」 エヴァンズは文潔たちに望遠鏡を覗かせた。エヴァンズの導きによって、木々のあいだを矢のように飛ぶ、二、三羽の小さな黒い鳥をなんとか見分けることができた。
「あんまりきれいな鳥じゃないだろ。もちろん、パンダと違って、一般にはアピールしない。この惑星では、世間の興味を惹かない種が、毎日のように絶滅している」「この木はみんな、あなたがひとりで植えたの」
「ほとんどはね。最初のうちは現地の人間を雇っていたが、すぐに資金が尽きた。苗木や灌漑に、とにかく金がかかるんだよ。でも、じつはうちの父親は億万長者なんだ。多国籍石油企業のだ。だが、もう二度と資金は提供してくれない。それに、こっちももう、親父の金を使う気はない」
 エヴァンズの語りは、はじまったら最後、止まることなく滔々とつづいた。「十二歳のとき、父の会社が所有する三万トンのタンカーが大西洋の沿岸で座礁して、二万トン以上の原油が海に流出した。そのとき、うちの一家は、事故が起きた海域からそう遠くないところにある別荘で、バカンスを楽しんでいた。事故の一報を聞いて、父がすぐに考えたのは、どうやって責任を逃れ、自分の会社の損失を少なくするかということだった。
 その日の午後、ぼくは地獄絵と化した海岸に赴いた。海はねっとりした分厚い油膜に覆われて黒くなり、波はなだらかで弱々しかった。ビーチもあたり一面、黒い油に覆われ、ぼくはボランティアたちといっしょに、まだ生存している海鳥をビーチで探しまわった。
海鳥は汚い油の中でもがいていて、一羽一羽がまるでアスファルトでできた黒い彫刻のようだった。ふたつの目だけがまだ生きている証だった。黒い油の中の目は、何年たってもまだ夢に見る。ぼくらは海鳥を洗浄液に浸して、羽根にこびりついた油を洗い流そうとしたが、とてもたいへんな作業だった。油と羽毛はどうしようもなくくっついてしまい、少し力を入れてこすると、油といっしょに羽毛が抜けてしまう……夕方には、海鳥たちの大半が死んだ。油まみれになったぼくらは、黒いビーチに座り、真っ黒な海に夕日が落ちていくのを眺めた。世界の終わりみたいだった。
 いつのまにか、うしろに父が立っていて、小さな恐竜の骨格を覚えているかとたずねてきた。もちろん覚えていた。石油調査の際に発見されたもので、ほとんど完全に揃っていた。父は大金をはたいてそれを買いとり、きちんと組み立てて、祖父の邸宅の敷地に設置した。父はつづけて言った。『マイク、恐竜がどんなふうに滅びたか、話したことがあっただろう。小さな星が地球にぶつかり、世界は火の海になった。次に長い暗闇と寒気が訪れた……あの晩、おまえは悪夢にうなされて目を覚まし、夢の中で自分がその恐ろしい時代に戻ったと言っていたな。これから言うことは、あの夜おまえに言いたかったけれど言えなかったことだ。いいか、もしおまえがほんとうに白亜紀後期に生きていたら、そのほうがラッキーだった。なぜなら、いまのわれわれは、もっと恐ろしい時代に生きているからだ。いまの地球の生物種が絶滅する速さは、白亜紀後期の比ではない。この現代こそ、ほんとうの大絶滅時代だ。だから息子よ、おまえが見ているこの悲惨な光景は、たいしたことではない。遙かに大きなプロセスの中の些細な一エピソードに過ぎない。海鳥がいなくなっても、われわれは生きていけるが、石油はそうはいかない。石油がなくなった世界を想像できるか 去年の誕生日、おまえにプレゼントしたあのきれいなフェラーリを思い出せ。十五歳になったら運転してもいいと約束したが、もし石油がなければ、あれはただの鉄くずで、永遠に運転できない。もしいま、おまえがおじいさんの家に行こうと思えば、プライベートジェットに乗って、海を越え、十数時間で着く。だが、石油がなければ、帆船で一カ月以上も航海しなければならない……。文明というゲームのルールがこれだ。人類の生存と快適な生活を保証することが最優先事項で、それ以外のすべては小さな問題だ』と。
 父はぼくに大きな希望を抱いていたが、最終的にぼくは、父が望むような人間にはならなかった。あの瀕死の海鳥の目がいつも背後からじっとぼくを見つめていて、それが人生を決定した。十三歳の誕生日、将来なにをしたいか父に訊かれた。ぼくは命を救いたいと答えた。そんなにだいそれた夢じゃない。絶滅の危機に瀕している種を、どれかひとつでも救いたいというだけのことだった。あんまりきれいじゃない鳥でも、冴えない色の蝶でも、だれも気づかないくらい小さな甲虫でも。その後、ぼくは生物学を専攻し、鳥類と昆虫類の分類学者になった。ぼくの理想にはそれだけの価値があると、自分では思っている。鳥や昆虫のひとつの種を救うのと、人類を救うのとは、なんの違いもない。『すべての生命は平等』というのが、種の共産主義の基本綱領だ」「なんの基本綱領」文潔にはその言葉が聞きとれなかった。
「種の共産主義。ぼくが発明したイデァ№ギーだ。宗教と言ってもいい。核になる信仰は、地球上のすべての種はもともと平等だということだ」「それはただの理想でしょう。現実的じゃない。小麦や米だってひとつの生物種だけど、人類が生存するには、そんな平等は実現不可能よ」「遠い過去には、領主は奴隷に対して同じように考えていただろうね。それに、テクノロジーと進歩を忘れちゃいけない。いつか、人類が食糧を合成できるようになる日が来る。
そのずっと前から、イデァ№ギー的にも、理論的にも、きちんと準備しておく必要がある。実際、種の共産主義は、人権宣言の自然な延長と言える。フランス革命から二百年も経つのに、われわれはまだ、そこから一歩たりとも踏み出せていない。このことからも、人類という種のエゴと虚偽がわかる」
「いつまでここにいるつもり」
「わからない。この仕事には一生を費やす覚悟だよ。すばらしい気分だ。もちろん、理解してはもらえないだろうけど」
 エヴァンズは話し終えると、もう興味が失せたらしく、仕事に行かなければと言って、鍬と鋸を持ち、立ち上がった。別れ際、エヴァンズは文潔になにか特別なものでも感じたかのように、もういちど彼女に目を向けた。
 帰り道、文潔の同僚が、毛沢東の随筆『白求恩を記念する』の一節を引用した。「『気高く、純粋で、徳が高く、世俗の興味を超えた人』。ほんとにそんな生活を送っている人間もいるんだなあ」とため息をつく。
 ほかの者たちも、口々に賛同と感慨を述べた。文潔はほとんど独り言のように言った。
「もし彼みたいな人がもっとたくさんいれば、いえ、ほんの少しでも多くいれば、歴史は違う道すじをたどっていたでしょうね」
 もちろんだれも、文潔の言葉のほんとうの意味はわからなかった。
 プロジェクトチームの責任者が話題を仕事に戻した。「この場所はだめだと思う。上が認めないだろう」
「なぜです 四つの候補地の中で、電磁環境はここがベストですよ」「社会環境はどうだ 同志よ、技術的な側面だけ考えていればいいというものではない。
ここの貧困ぶりを見てみろ。貧しければ貧しいほど、住民は反政府的になる。わかるかね もし観測基地がここに建設されたら、科学者と地元住民のあいだでトラブルが生じる可能性が高い。農民たちが天文観測基地のことを、いくらでも金を引き出せる財布だと考えるかもしれない」
 この場所は、やはり承認されなかった。理由はチームの責任者が言ったとおりだった。
 それからエヴァンズの消息を聞くことのないまま、三年の月日が流れた。
 しかし、ある春の日、文潔はとつぜん一枚の葉書を受けとった。差出人はエヴァンズで、そこには一行だけ、こう書いてあった。
『来てくれ。この先どうすればいいか教えてほしい』 文潔は列車に乗り、そのあとまた何時間かバスに揺られて、まる一日がかりで西北地方の辺鄙な山村にやって来た。
 小高い山のてっぺんに登ると、エヴァンズが植樹した森が見えた。樹木が成長したおかげで、三年前よりはるかに鬱蒼と茂っているように見える。しかし文潔は、その森が、かつてはもっとずっと大きかったことに気がついた。この二、三年で育った新しい区画が、すでに伐採されている。
 伐採は猛烈な勢いで進行中だった。どちらの方角を見ても、木々が次々に切り倒されている。森全体が、カイコに食い散らされた桑の葉のようだ。この速度でいけば、遠からず消えてしまうだろう。
 伐採作業に従事しているのは、付近のふたつの村の住人だった。彼らは斧と鋸とで、成長したばかりの小さな樹木まで一本一本切り倒し、トラクターや牛車でそれを運び下ろしていく。きこりは大勢いて、あちこちで小競り合いが起きていた。
 小さな木が倒されても大きな音は出ないし、チェーンソーのうなり声も聞こえない。だが、この光景はかつて見知っていたそれを思い出させて、文潔の胸が痛んだ。
 だれかが声をかけてきた──あの生産隊長だった。いまは村長になっていて、文潔に気づいて挨拶してくれたようだ。どうして森を伐採するのかたずねると、彼は言った。「この森は、法律の保護をうげねっがらよ」
「どうしてそんなことが 森林法がつい最近公布されたばかりじゃないですか」「ほだけど、白求恩が木さ植えるごど、だれが認めた 外人が勝手に中国の山に樹を植えで、なして法律に守られる」
「その理屈はおかしいでしょう。彼は荒れた山に木を植えていただけで、耕地を占有したわけでもない。それに、彼が植樹しはじめたとき、あなたたちはだれも文句を言わなかった」
「そだとも。それどころか、木を植えたこどで白求恩は県から造林模範の称号までもらっでる。もどは村でも、あと何年かしでから木を切るつもりだっだんだ。豚がふどったら殺すど同じだ。ほだげど、南圪村のやづらが待ちぎれねぐなっちまって、したらおれらも、いま切らねどなにもなぐなっがら」
「すぐにやめて 政府にこのことを報告します」
「無駄だ」そう言いながら、村長は煙草に火を点けると、遠くで材木を積み込んでいる一台のトラックを指さした。「あの車を見でみな。県の林業局の副局長のだ。鎮の派出所なんかのもある。木の数で言ったら、あいづらが運ぶほうが多いんだよ 言ったべな、この林はだれのでもねえ。保護をうげねえ。それに葉同志、あんだ、大学の先生だべ。これとなんの関係があんだね」
 土でできたあの二軒の家は以前のままだったが、エヴァンズは不在だった。文潔は森の中でエヴァンズを探し当てた。彼は斧を持ち、真剣に木の枝を剪定していた。しばらく前からずっと作業しているらしく、疲労困憊したようすだった。
「無駄な努力かもしれないが、それでもかまわない。やめられないんだよ。やめたら、心が折れてしまうからね」エヴァンズはそう言って、慣れた手つきで曲がった枝を切り落としていく。
「いっしょに県に行って訴えましょう。それでも埒らちが明かないなら、省都に行けばいい。きっとだれかが、彼らを止めてくれる」文潔は力をこめて言った。
 エヴァンズは手を休め、驚いた顔で文潔を見た。沈む夕日の光が林を抜けて射し込み、彼の瞳に反射している。「葉さん、きみはぼくが、この森のためにこんなことをしていると本気で思っているのかい」エヴァンズは笑いながら首を振ると、持っていた斧を投げ捨て、一本の木にもたれて座り込んだ。「彼らを止めようと思えば、簡単に止められるんだよ」エヴァンズはからっぽの工具袋を地面に敷くと、そこに座るように文潔に促してから、また口を開いた。「ぼくはアメリカから帰ってきたばかりだ。二カ月前に父が亡くなってね、遺産の大半はぼくが相続した。兄と姉は、たった五百万ドルずつしかもらえなかった。意外だったよ。父が最期にこんなことをしてくれるなんて、ほんとうに思いもよらなかった。父は心の中で、ぼくを──あるいは、ぼくの理想を──認めてくれていたのかもしれない。不動産をべつにして、いまぼくが自由にできる資産がどのくらいあると思う 約四十五億ドルだ。この伐採をいますぐやめさせて、かわりに植林させることくらい造作ない。見渡すかぎりの黄土の山を人工林で覆いつくすこともできる。でも、そんなことをしてなんの意味がある
 いまぼくらの目の前にあるすべては、貧困の結果だ。でも、だったら豊かな国はどうだ 彼らは自国の環境だけを守り、汚染源となるような産業は貧乏国に移転する。たぶんあなたも知っているだろうけど、アメリカ政府は最近、京都議定書の批准を拒否したばかりだ。……全人類が同じなんだよ。文明が発展しつづけるかぎり、ぼくが救おうとしているツバメも、そのほかのツバメも、遅かれ早かれみんな絶滅してしまう。時間の問題でしかない」
 文潔は黙ってそこに座り、落日の木漏れ日を眺め、遠くから聞こえてくる伐採の音を聞きながら、二十数年前の大興安嶺の森を思い出していた。文潔はそこで、同じような会話をもうひとりの男と交わしていた。
「ぼくがなぜここに来たか知っているかい」エヴァンズがつづけて言った。「種の共産主義思想は、もともと古代の東洋で芽生えた」
「つまり、仏教のこと」
「そう。キリスト教は人間しか重視しないからね。すべての種をノアの箱舟に乗せはしたが、人間以外の生きものに、人類と同等の地位を与えようとはしなかった。でも、仏教はすべての生命を救おうとする。それでぼくは東洋に来たんだが……いまにして思えば、どこでも同じだったのかもしれない」
「そうよ、どこだって同じなのよ。人類はみんな同じ」「いまのぼくになにができるだろう 生きる支えはどこにある ぼくは四十五億ドルと、多国籍にまたがる石油会社を持っているが、それがなんになる 絶滅に瀕した種を救うのに必要な資金が四百五十億ドルをくだらないのはたしかだし、悪化する生態環境を救うのに必要な金額は四千五百億ドルを超えるだろう。でも葉さん、もしそれが可能だったとして、いったいなんの役に立つ 文明はやっぱり、いままでと同じように、地球上の人類以外の生命を滅ぼしつづけるだろう。四十五億ドルで航空母艦一隻ぐらいは建造できるだろうが、千隻の空母があっても、人類の狂気を止めることはできない」「マイク、まさにそれが言いたかったのよ。人類の文明は、もはや自力では矯正できない」
「でも、人類以外の力なんてどこにある 神が存在したとしても、すでに死んでいるようなものだ」
「それがあるのよ。ほかの力があるの」
 このとき、太陽はすでに山陰に隠れていた。伐採作業に従事していた人々もきょうの仕事を終え、森林と周囲の黄土の山は静けさに包まれている。文潔はエヴァンズに、紅岸基地と三体世界のことをすべて話して聞かせた。エヴァンズは静かに耳を傾けていた。暮色に染まる樹林と周囲の黄土の山も、エヴァンズといっしょに、じっとその話を聞いているようだった。文潔が話し終えるころには、東から昇ってきた明るい月の光が森の中をまだらに照らしていた。
「いま聞いた話は、まだとても信じられない。あまりにも突拍子がなさすぎる。しかし幸運にも、ぼくにはそのすべてを検証する力がある。もしそれが真実ならね」エヴァンズは文潔に手を差し伸べ、のちに地球三体協会が新しいメンバーを受け入れるときにかならず言うことになる言葉を口にした。「われわれは同志だ」
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