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蟻あり 一
日期:2024-07-31 23:15  点击:303
蟻あり
ANTS
小林幸治訳
   一
 夜の大嵐が過ぎ去った後の今朝の空は、快晴で青がまぶしい。空気──このかぐわしい空気──は嵐で無数の松の大枝が折れて、流れ出た甘い樹脂の匂いで満ちている。竹薮の近所で法華経を讃える鳥の笛のような声を聞く、その世界は南風のおかげで非常に穏やかである。今は夏、遅れに遅れて、真実我々と共に有り、風変わりな日本独特の色合いをした蝶が辺りをひらひら飛び、蝉せみはぜーぜー喘あえぎ、スズメバチはハミングし、ブヨは太陽の下で踊り、そして蟻は損壊した住居の修理に忙しい……ふと日本の詩を思い出す── 行方なき、
 蟻の住まいや
   五月雨ごげつあめ
〔今、可哀想な生き物が何処にも行く所が無い!……悲しいかな蟻の住まいもこの五月の雨の中では!〕
 しかし、庭のこの大きな黒い蟻達には、特に同情が必要とは見えない。大木が根こそぎにされ、家々は微塵に吹き飛ばされ、道路が存在から洗われる中で、嵐を思いもよらぬ方法で切り抜けた。まだ台風の前に、地下の町への出入り口を塞ぐより他は、目に見える予防措置をとらなかった。そして勝利した今日の労働の光景は、蟻のエッセイを企てよと駆り立てる。
 私は論文を何か古い日本の文献で始めたかった──情緒的か哲学的な何かである。しかし日本の友人の全てが、その主題について捜し出せたのは──小さな価値ある若干の詩句を例外とするが──それはチャイナの物であった。このチャイナの素材は主に不思議な物語から成り、その内のひとつが価値の有る引用に見える──他ニ良イ物ガ無イカラ。
  *
 チャイナの台州地方に、ある女神を長年に渡って毎日熱心に崇拝する、信心深い男がいた。ある朝、祈祷をしている間に、黄色い衣を着た美しい女が部屋へやって来て、目の前に立った。たいそう驚いて、何が望みで、どうして断りもなく入って来たのか訊たずねた。彼女は答えた「妾わらわは人にあらず、そなたが長きに渡り誠実に崇拝して参った女神にあり、この度は、信心が無駄ではなかった証明にやって参った……そなたは蟻の言葉を使いこなせるか?」崇拝者は返事をした「私は卑しい生まれの無学の者にございます──学者でもなければ身分の高い人達の言葉でさえ分かりません。」この言葉に女神は微笑み、懐から香箱のような形をした小さな箱を取り出した。箱を開け、その中に指を浸すと、何かの軟膏を付け男の両耳に塗った。「さあ」彼女は言う「どこかで蟻を捜して、見付けたなら、かがんで注意深く話を聞いてみるが良い。そなたにはそれが理解できて、何かの役に立つ話が聞けるであろう……ただし、これだけは覚えておくが良い。蟻を怖がらせたり、苛立たせたりしてはならぬ。」そう言い残して女神は消え去った。
 男はすぐさま蟻を捜しに家を飛び出した。戸口の敷居を横切るとすぐに、家の柱のひとつを支える石の上の二匹の蟻に気が付く。立ち止まり見下ろして聞き耳を立てると、驚いたことにその話が聞こえ何を言っているか理解できるのが分かった。「暖まる場所を捜しに行こうぜ」蟻の一匹が提案した。「何でまた暖まる場所を?」別のが訊ねた──「この場所に何か不都合でも有るのか?」「そりゃあ寒い上に湿っぽいじゃないか。」最初の蟻が言った。「ここには大きなお宝が埋まっていて、お日さまの光じゃその辺を暖められないのさ。」二匹の蟻が行ってしまうと、鋤すきを取りに走った。
 柱の近くを掘ってみると、金貨の詰まった大きな壷が多数出てきた。この宝の発見は彼をたいそうな金持ちにした。
 その後しばしば蟻の会話に耳を傾けてみた。しかし、再びその話を聞くことはできなかった。女神の軟膏は彼の耳を神秘的な言葉へと、一日だけのために開いた。
  *
 さて、このチャイナの帰依者のように、私は生まれつき蟻の会話を聞くことができない、無学の者だと白状しなければならない。しかし科学の妖精が時々目と耳を彼女の魔法の杖で触り、そうすると少しの間だけ聞き取れないはずの物事が聞こえ、ごくわずかな物事が認識できるようになる。
 
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