百首歌たてまつりし時
33 天の原富士のけぶりの春の色の霞になびくあけぼのの空\前大僧正慈円
【通釈】
33 大空に立ち昇る富士の煙が、春の色である浅緑の霞となってなびいている曙の空。○百首歌 正治二年院第二度百首。○富士のけぶり 富士山の噴煙。当時は時折噴煙を上げていた。富士山は駿河国の歌枕とされる。静岡県と山梨県にまたがる火山で、日本の最高峰。○春の色 五行説によれば、青。霞は浅緑と歌われることが多いので、青に通じる色としていうか。○霞になびく 煙が霞となるという考え方を踏まえていう。▽参考「今日こそは春は来にけれ富士の嶺の煙と見るや霞なるらむ」(嘉応二年五月二十九日実国家歌合·藤原実国)。