晩霞といふことをよめる
35 なごの海の霞のまよりながむれば入る日を洗ふ沖つ白波\後徳大寺左大臣
【通釈】
35 なごの海の霞の隙を通して眺めると、今しも沈もうとする夕日を沖の白波が洗っている。○なごの海 摂津国の歌枕か。「なごの海に立つとも見えぬをし鴨や遠ざかりゆく海士のとも舟」(承安二年十二月広田社歌合·藤原実守)、「なごの海の潮路遥かにながむれば雲立ちまじる沖つ白波」(同·藤原懐能)。○下句 「秋の海に映れる月を立ち返り波は洗へど色も変らず」(後撰·秋中·清原深養父)、「沖つ風吹きにけらしな住吉の松のしづ枝を洗ふ白波」(後拾遺·雑四·源経信)。▽林下集では、藤原公通主催十首歌会の詠。冶承三十六人歌合、月詣集·正月所載。無名抄に、俊恵が第二、三句を批判したという。