をのこども詩を作りて歌に合はせ侍りしに、水郷春望といふことを
36 見わたせば山本霞む水無瀬川ゆふべは秋と何思ひけむ
太上天皇
【通釈】
36 見渡すと山の麓は霞み、水無瀬川が流れている。夕べの趣は秋に限るなどと、どうして思っていたのだろうか。○をのこども…… 元久詩歌合 二五。○山本 山の麓。山は水無瀬山とも、淀川を隔てた八幡山などの山々ともいう。○水無瀬川 摂津国の歌枕。大阪府三島郡島本町を流れ、桂川(淀川)に注ぐ。後鳥羽院は淀川西岸に水無瀬離宮を営み、しばしば訪れた。○ゆふべは秋 「秋は夕暮れ」(枕草子·一段)、「秋はなほ夕まぐれこそただならね荻の上風萩の下露」(藤原義孝集)