摂政太政大臣家百首歌合に、春の曙といふ心をよみ侍りける
37 霞立つ末の松山ほのぼのと波に離るる横雲の空
37 霞立つ末の松山ほのぼのと波に離るる横雲の空
藤原家隆朝臣
【通釈】
37 霞のたなびく末の松山はほんのりと見え、ぼうっとした水平線から横雲が離れてゆく曙の空。本歌「君をおきてあだし心をわが持たば末の松山波も越えなむ」(古今·東歌·陸奥歌)。○摂政太政大臣家百首歌合 六百番歌合 二三。○末の松山 陸奥国の歌枕。現在の宮城県多賀城市八幡の末松山宝国寺の近辺と伝えられる。○ほのぼのと 「末の松山」と「横雲の空」の両方についていう。○波に離るる 藤原為家の詠歌一体で制詞とされた句。○横雲の空 「帰るさをあらましごとにせしよりもなほたぐひなき横雲の空」(拾玉集)。▽家隆卿百番自歌合に自選した歌。