千五百番の歌合に
46 梅の花たが袖ふれしにほひぞと春や昔の月に問はばや
右衛門督通具
【通釈】
46 この梅の花の薫り、それは一体誰の袖が触れた匂いなのかと、昔と変らない春の月に尋ねたい。本歌「色よりも香こそあはれと思ほゆれ誰(た)が袖触れし宿の梅ぞも」(古今·春上·読人しらず)、「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」(同·恋五·在原業平)。○千五百番の歌合 建仁元年(一二〇一)から三年春頃までに成立。後鳥羽院の主催。○二·三句 誰の袖が触れてその移り香がしみついた匂いなのかと。