文集、嘉陵春夜詩、不 明不 暗朧々月といへることをよみ侍りける
55 照りもせず曇りもはてぬ春の夜のおぼろ月夜にしくものぞなき
大江千里
【通釈】
55 皎々と照るのでもなく、といってすっかり曇ってしまうのでもない春の夜のおぼろ月に及ぶものはないよ。○文集 唐の詩人白楽天(白居易)の詩文集、白氏文集。全七一巻。○嘉陵春夜詩 七言絶句で、原題は「嘉陵夜有 懐」、白氏文集·巻一四所収。「嘉陵」は中国四川省。○不 明不 暗朧々月 原詩は「不 明不 闇曚朧月」で、「不 暖不 寒慢慢風」と対をなす。▽唐詩の句を翻案した千里の家集句題和歌(千里集)の歌。源氏物語·花宴で引歌とされ、新撰朗詠集にも載る。