題しらず

60　古里に帰る雁がねさ夜ふけて雲路にまよふ声聞こゆなり

読人しらず

【通釈】

 

60　故郷の北国に帰る雁が夜更け、雲の中の道で迷って鳴く声が聞こえる。○古里　雁の故郷である北国。○下句　参考「帰る雁雲路にまどふ声すなり霞吹きとけ木の芽はる風」（後撰·春中·読人しらず）。「聞こゆなり」の「なり」は物音を聞いて推定する助動詞。